小さい頃に、銀座にある月光荘という画材屋さんの道具にご縁があり、実際に使用していたので月光荘には少なからず親近感がありました。

その創業者に関する本があると数年前知って面白そうだと購入し、長らく寝かせていましたが、旅行のおともにふと読んでみる気になりました。

「人生で大切なことは月光荘おじさんから学んだ」

https://amzn.asia/d/8jG5kON

文房具屋さんでは手に入らない、こだわりのオリジナルの品物であることは小さい頃にも認識していましたが、その背景にあるストーリーや製品の素晴らしさなどには全く氣づけていなかったと思います。ただ、カラフルなスケッチブックがかわいいなと思っていたのを覚えています。

小さい頃、絵を描くのは好きでした。

不真面目部員ではありますが、中学では美術部に入ったくらいです。当時、なぜか油絵はそんなに好きではなかったのですが、水彩画や半紙に顔彩で書く絵は好きでした。

その後会社で働くようになり、絵を描くことなどすっかり自分の中から消え去っていました。

でもここ数年、美術というか、自分で何かを造ったり、描いたりすることに魅力を感じはじめて、最近は、俳句に添える俳画を習い始めました。自分の中の創作活動の熱が湧いてきた感じです。

そのような中で、この本を読みたくなったのは自然の流れと思えます。

本では、創業者である橋本平蔵さん「月光荘おじさん」が生きた戦前から戦後、そして亡くなるまでのエピソードが、過去におじさんが書いた「月光荘しんぶん」の記事や、交流のあった方々の寄稿を通じて描かれています。本の構成も、ユニークで個性的で楽しめました。

「月光荘おじさん」はもちろん、おじさんに関わる登場人物の皆さんは、それぞれ個性的で創作意欲に溢れていました。どんな時でも粘り強く、良いものを作り続けようという気概が感じられる時代。戦争や占領をはじめ、現代とは比べ物にならない大変なこともあったと思うのですが、おじさんを応援してくれる人がたくさん出てきて、素晴らしいものが生み出されていった様子が描写されている本でした。なんといっても、おじさんを画材の職人に導き、「月光荘」という店名の名付け親は、教科書で知る与謝野晶子さんでした。私の教養の欠如で、与謝野晶子さんは教科書に出てくる人で止まっていたのですが、損得ではなく自分が良いと思った人を応援する姿勢は素敵だなと思ったのでした。どのような経緯でそうなったかは本を読んでのお楽しみ。

本では、大好きな仕事を通じて、お客さまが喜ぶ製品を作るというのが根底にあるメッセージだと私は受け取りました。まさに、私の今のテーマと重なり、私の中にある、職人魂を刺激する作品でした。

これからは、人それぞれの職人技が輝いてくる時代だと思っています。それは、いわゆる何かを作る職人さんではなくても、事務の会社員でもお母さんでもお父さんでも、趣味の領域でも、何かしら職人技を持っていると思っています。それにみんなが氣づき、輝きが溢れ出る世の中になるといいなと思っています。

何十年かぶりに、月光荘のカラフルなスケッチブックを買って、それに絵を描いてみよう。

楽しみがまた増えました。